画像検査とは?機械×人のハイブリッド検査が最適解のワケ

近年、多くの製造現場で深刻な課題となっているのが人手不足です。熟練検査員の確保が難しくなり、品質維持の面でも大きなリスクを抱えるようになりました。そのため、外観検査の分野では「人の目による検査」から「カメラを用いた画像検査」へと移行が進んでいます。

 

画像検査とは?機械×人のハイブリット検査

「画像検査」と聞くと、多くの方が”機械がカメラ映像を解析して自動的に不良品を判定する仕組み”を思い浮かべるかもしれません。確かにそれは画像検査の代表的な形態ですが、実はカメラで撮影した画像を人の目で確認し、判断する“目視型の画像検査” も広く行われています。

つまり画像検査とは、

  • 機械による自動検査
  • 人による目視判定

 

この2つの形態が存在します。

人による画像検査(目視型画像検査)

従来、外観検査は検査員が裸眼や拡大鏡、実体顕微鏡を用いて製品を直接観察する「目視検査」が主流でした。しかし、この方法には次のような課題がありました。

  • 長時間の検査で姿勢が悪くなり、目や体への負担が大きい
  • 製品を手に取り動かす必要があり、作業効率が低い
  • 検査記録が残らず、再確認や教育利用が難しい

 

こうした背景から、近年ではカメラで撮影した画像をモニターに表示し、それを人が確認する「目視型画像検査」の導入も進んでいます。

 

目視型画像検査では、

  • モニターで姿勢を保ちやすく、検査員の疲労を軽減できる
  • 撮影条件を安定化でき、効率的に検査が可能
  • 画像を保存して、トレーサビリティや教育資料として活用可能

 

といったメリットがあり、従来型に比べて効率性と再現性の面で優位性があります。

従来の目視検査と目視型画像検査の比較

項目 従来の目視検査
(顕微鏡・拡大鏡など)
目視型画像検査
(カメラ+モニター)
作業姿勢 顕微鏡を覗き込む姿勢で負担大 モニター確認で負担軽減
記録・再確認 基本的に残らない 画像保存により後から確認可能
トレーサビリティ 難しい 顧客報告や教育に活用可能

手軽に目視型画像検査を導入するには?

目視型画像検査といっても、必ずしも大がかりな専用装置を導入する必要はなく、簡易的な方法としては、実体顕微鏡にカメラを取り付けて、その映像をモニターに映し出す手段があります。

  • 従来の顕微鏡をそのまま利用できる
  • 検査員がモニターを見ながら作業できるため、姿勢が楽になる
  • 複数人で同じ映像を確認できるので教育にも活用できる

 

比較的低コストで導入できる点が特徴で、「とりあえず画像を使った検査を始めたい」現場にとっては有効な第一歩になります。基本的には人の判断に依存しますが、最近はカメラに簡易的な不良検出機能を備えた製品も登場しており、選択肢は広がっています。

画像検査の基本:機械と目視の違い

ここまでは、従来の目視検査から発展した「画像による目視検査」を見てきました。では改めて、機械による画像検査と人による画像検査の違いを整理してみます。

機械による画像検査

カメラと専用照明を使い、欠陥を撮影した画像を画像処理アルゴリズムやAIで解析する方式です。

  • 品質の均一化・標準化が可能

人による画像検査

カメラと専用照明を使い、欠陥を撮影した画像をモニターに映し、検査員が目で確認して良否を判定する方式です。

  • 機械では判定が難しい“グレーゾーン”を判断できる
  • 新しい欠陥や規格外れなど、機械が想定していない状況にも柔軟に対応できる

 すべてを機械に任せられない現実

「カメラで撮影できるなら、人が介在しない完全自動外観検査ができるのでは?」そう思われがちですが、実際はそう単純ではありません。

見えすぎてしまう問題

高解像度カメラや特殊照明を使うと、人間の目では認識できないレベルの微細なキズまで鮮明に映し出せます。しかし、その中には本来検出したい欠陥以外の余計な情報も含まれるため、機械が自動的に判定すると誤検出が増えることがあります。結局は「そのキズが不良規格に当てはまるのか」を人が確認し、規格に照らして最終判断することになります。

AI・ルールベースの限界

AI検査やルールベース検査は不良規格の複雑さにすべて対応できるわけではありません。製造現場で用いられる不良規格には、例えば次のようなものがあります。

  • 「異物なきこと」「変形なきこと」などの存在有無を問う規格
  • 「キズが長さ〇mm以上の場合は不良」「欠けが直径△mmを超える場合は不良」などの定量的な規格
  • 「光を当てたときに目視で分かるレベルは不良」などの主観を含む規格

 

ルールベース方式ではしきい値で対応できますが、曖昧な規格の解釈まではできません。またAIは過去に学習したパターンしか判定できず、工程変更や新しい素材によって発生する未知の不良には弱いという限界もあります。

近年は「良品学習」によって未知の異常を検出するAI技術も登場していますが、それでも「3mm以上なら不良」といった閾値の線引きや「目視で確認できるレベルかどうか」といった主観的判断までは自動化できません。

機械×人のハイブリッド検査が最適解

画像検査は、単なる「目視検査の代替」ではありません。

  • 機械は客観的で繰り返し精度が高い検査 が得意
  • 人は柔軟な判断や新しい欠陥への対応 が得意

 

この2つを組み合わせたハイブリッド検査こそが、品質と効率を両立させる最適解です。

 

「機械でできるところは任せ、最終的な判断は人が行う」

「人の判断をAI学習に活かし、徐々に機械化を進める」

 

こうした機械と人の協業のしくみを構築することで、外観検査はより高品質かつ持続可能な体制へと進化していきます。

まとめ:外観検査の未来は「完全自動化」ではない

今後、AIや画像処理技術の進化により、自動判定できる範囲は広がっていきます。しかし「不良規格の解釈」「新しい欠陥への対応」といった領域は、今後も人の柔軟な判断が不可欠です。つまり、画像検査による外観検査の未来は「完全自動化」ではなく、人と機械が役割を分担し、その協働を洗練させ、ハイブリッドな検査体制を整えることが品質確保と生産効率の両立につながると言えるでしょう。

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